キッキッというて奇声を放った、件の小坊主はそのまま後飛びにまた宙を飛んで、今まで法衣をかけておいた、枝の尖へ長い手で釣し下ったと思うと、くるりと釣瓶覆に上へ乗って、それなりさらさらと木登をしたのは、何と猿じゃあるまいか。 枝から枝を伝うと見えて、見上げるように高い木の、やがて梢まで、かさかさがさり。 まばらに葉の中を透して月は山の端を放れた、その梢のあたり。 婦人はものに拗ねたよう、今の悪戯、いや、毎々、蟇と蝙蝠と、お猿で三度じゃ。 その悪戯に多く機嫌を損ねた形、あまり子供がはしゃぎ過ぎると、若い母様には得てある図じゃ。 本当に怒り出す。 といった風情で面倒臭そうに衣服を着ていたから、私は何にも問わずに小さくなって黙って控えた。﹂